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子育て情報 POSTED / 2022.05.17
モンテッソーリ教育のいろは | 後悔しないために知っておきたいメリット・デメリット
「モンテッソーリ教育」という名前はよく聞きますが、ちょっとどんな内容かわからないのではないでしょうか。しかし多くの有名人がモンテッソーリ教育を受けていたと聞くこともあります。興味はありますよね。
この記事では、モンテッソーリ教育のおおまかな内容について網羅してまとめます。モンテッソーリ教育の幼稚園に行こうか検討したり、自宅でやってみようか考えたりしている人は、ぜひ読んでみてください。そして興味が出たら、さらに詳しく調べてみてください。
▼モンテッソーリ教育について
●モンテッソーリ教育は、子どもには自分を教育する「自己教育力」が備わっているという考えが根本にある
●「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことが目的
●教具の使用や「お仕事」の時間など、ほかにない特徴がある
●5つの分野の活動が軸(日常生活の練習・感覚教育・言語教育・算数教育・文化教育)
●モンテッソーリ教育は、専門の保育園・幼稚園、小学校だけでなくご自宅でも実践可能!
– モンテッソーリ教育のメリット5つ –
●子どもの個性を伸ばせる●自立できる、自ら考え行動できるようになる
●積極性が身につく
●集中力が養われる
●情緒が安定する
– モンテッソーリ教育のデメリットや後悔してしまう理由7つ –
●環境を整えるのが難しい、親御様の負担が大きい●協調性にかけ、わがままに。集団生活になじめなくなることも
●子どもへの関わり方が難しい、親子関係の違和感
●幼稚園などで外遊びの時間や行事が少ない
●興味があることしかやらなくなる
●小学校入学後に周りとの違いを感じた
●子どもに合っていない、楽しそうではない
目次
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、子どもには自分を教育する「自己教育力」が備わっているという前提のもと体系化された教育方法です。
大人が環境を整えれば、あとは子どもが自分の興味ある活動を行うことで自力で成長できると考えられています。実際、モンテッソーリ教育では自分で取り組む場面が多いため、自立した積極的な子どもに育つとされています。
日本では、おもに0~6歳児のための教育方法として知られ、多くの保育園・幼稚園や家庭で実践されています。日本では数が少ないですが、世界的には小学校以上の多くの学校でモンテッソーリ教育が行われています。
モンテッソーリ教育は、20世紀初頭にイタリアのマリア・モンテッソーリ博士によって確立されました。モンテッソーリ博士は、ローマ大学医学部初の女性医学博士としても知られています。
博士は障害児教育に携わり成果を挙げます。その教育方法は障害児に限定されるものではないという確信がありました。
そして博士は1907年に健常児の保育施設の監督・指導を任される機会を持ちます。その施設が「子どもの家」です。モンテッソーリ教育はこどもの家で実践・体系化されていきました。今ではモンテッソーリ教育を実践する幼児教育施設を「子どもの家」と呼ぶようになっています。
モンテッソーリ教育の理念・目標
モンテッソーリ教育は、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことが目的とされています(日本モンテッソーリ教育綜合研究所)。
モンテッソーリ博士自身のことばにも、「この教育の真髄は、教師が子どもに何かを教えるのでなく、子どもに内在する自分で自分を育てる力、『自己教育力』を信じそれを促してあげることである」というものがあります。
大人は子どもに備わっている「自己教育力」を発揮させ、それによって自立した人間を育てるという点がモンテッソーリ教育の大きな柱だといえるでしょう。
モンテッソーリ教育の特徴
次にモンテッソーリ教育の特徴についてまとめます。これから説明する特徴は、モンテッソーリ教育の幼稚園や保育園だけの特徴ではありません。家庭で実践する場合もふくめて、モンテッソーリ教育が具体的にどのような方法で「自己教育力」を促して子どもが育っていくかの特徴です。ここでは幼児期の教育の特徴についてまとめます。
大きく分けて次の5つの特徴があります。
「教具」の使用
「お仕事」の時間
発達段階「敏感期」
教師・大人の役割
整えられた環境
では、1つずつ具体的に見ていきます。
モンテッソーリ教育の特徴➀「教具」の使用
モンテッソーリ教育では、「教具」と呼ばれる独自の知育玩具を使用します。教具の設計にはモンテッソーリ教育ならではの考え方が反映されています。
素材や大きさなどについては次の点に注意して作られています。
「手に取りやすいサイズであること
「色や形が魅力的であること
「木など自然で美しい素材を使うこと
「上質で清潔であること
さらに教具は2つの側面を持つ「ユニット」として設計されています。たとえば動かし方という技術的側面と大きさや順序など概念的側面とをひとまとまりに学ぶといった具合です。それは教具によって異なり、教師はその学習する内容を把握してその子どもに合わせた教具を「提示」します。
また子どもが混乱しないような工夫が加えられています。たとえば「ピンクタワー」という教具があります。これは1cm刻みで大きさの異なる立方体が10個セットになったものです。大きさはそれぞれ違いますが色はすべてピンク色です。これは「性質の孤立化」と呼ばれる「性質の違いは1つ」にしぼるという考えに基づいています。
そのほか子どもが自力で間違いに気づいて直す「誤りの訂正」ができる作りになっている教具もあります。
モンテッソーリ教育の特徴②「お仕事」の時間
モンテッソーリ教育では教具を使って子どもが活動することを「お仕事」と呼びます。大人にとって仕事が生活に必要な活動であるように、教具を使った活動は子どもの成長にとって必要な活動です。一般の遊びと区別するために「お仕事」と呼んでいます。
お仕事は、興味だけでなく個々の発達に合わせた内容でなくてはいけません。モンテッソーリ教育では発達の期間は生まれてから24歳まで続くとし、6年ごとに4つの段階に分けています。0~6歳までの幼児期は第1段階とされます。
乳幼児期はさらに0~3歳の「吸収する精神」の時期と3~6歳の「意識の芽生え」の時期に分かれます。それぞれの時期には、次のような「お仕事」を行います。
【「吸収する精神」の時期】
粗大運動の活動…ハイハイや歩行などの全身運動
微細運動の活動…握る・落とすなど主に手指を使った運動
日常生活の練習…ボタンのつけ外しや観葉植物の世話など
言語教育…話しことばによる語彙を身につける
感覚教育…教具を通じて、「きれい」「危険」などの感覚を養う
音楽…音楽を聴くこと・楽器を鳴らすこと・歌うこと・踊ることなど
美術…クレヨンや絵筆で絵を描いたり、粘土をこねたりする
【「意識の芽生え」の時期】
日常生活の練習…はさみ・ボタン・掃き掃除・洗濯など
感覚教育…五感を育てることで『言語・算数・文化教育』という知的教育分野の基礎をつくる
言語教育…発達に合わせて文字や文法について自然に習得
算数教育…具体的な物を通じた数量から半抽象的な数字・抽象的な暗算へ
文化教育…ことばと数以外の、小学校の社会科・理科に相当する分野
モンテッソーリ教育の特徴③発達段階「敏感期」
モンテッソーリ教育では、子どもがさまざまなもの・ことに対して特殊な感受性を持つ「敏感期」にぴったりの環境を用意することが大切だとしています。
4つに分けられる発達の段階のうち、6歳までの「乳幼児期」は大きな変化の起こる時期の1つだとされます。そして、乳幼児期にはさまざまな「敏感期」が現れると考えられています。
敏感期には大きく分けて次の6つがあります。
【敏感期の種類】
言語の敏感期…話しことば(6か月~3歳)、文字(3歳半~5歳半)
秩序の敏感期…場所や順番へのこだわり(6か月~3歳前後)
感覚の敏感期…探求・溜め込み(0~3歳)、整理・分類・秩序化(3~6歳)
運動の敏感期…運動機能の発達(0~3歳)、洗練・調整(3~6歳)
数の敏感期…年齢へのこだわり・お風呂で数を数える(4~5歳)
文化の敏感期…ことば・数以外への興味(6~9歳)
これらの敏感期に合わせて、お仕事などの環境が準備されています。
モンテッソーリ教育の特徴④教師・大人の役割
モンテッソーリ教育において、教師や大人の役割は子どもが自己教育力を発揮できるよう環境を整えたり促したりすることです。知識を一方的に与えたりすることではありません。
保育園や幼稚園などでは、教師は1人ひとりの発達を理解して発達に合わせた環境を用意し「提示」します。やり方を教えることはありますが、学校の授業のようなイメージではありません。お手本を見せて子どもにわからせるという教え方です。
モンテッソーリ教育では、「訂正しながら教えるのではなく、教えながら教える」という考えに基づいて教えます。子どものやり方が間違っていたとしても、訂正したり否定したりするのではなく、手本を見せたりしながら教えていきます。時間がかかるかもしれませんが、忍耐強く教えること・見守ることが必要だという考えです。
自宅でモンテッソーリ教育を取り入れる場合には、自分が上記のようなやり方で子どもに接する必要があります。また、保育園や幼稚園を選ぶときは、先生が上記のような教え方をしてくれるかを見ることが大切です。
モンテッソーリ教育が合わなかったという声を見ていくと、教育方法そのものよりも先生や園との相性が悪かったケースの方が多いといえるように思われます。
モンテッソーリ教育の特徴⑤「整えられた環境」
モンテッソーリ教育では、子どもの周囲を整え「整えられた環境」とすることが必要とされます。「環境」には、「物理的環境」と「人的環境」があります。
人的環境は、主に先に述べた教師やまわりの大人のことを指します。子どもは自分で成長していくと考えているため、人的環境である大人は促したり見守ったりすることが中心となります。そのぶん、物理的環境が大切です。物理的環境は、幼稚園・保育園や家だけでなく、教具などあらゆるものが含まれます。
物理的環境は、子どもが大人の手を借りなくても活動できるように整えます。子どもサイズの家具を使うことはもちろんですが、子どもが使い方を理解できるようにすることも必要です。
モンテッソーリ教育の保育園や幼稚園ではそのように配慮されています。家庭でモンテッソーリ教育を実践する場合は、興味や発達に合わせて子どもがやりたいことに集中できるような環境づくりが必要です。具体的には次のような点を守って環境を整えます。
【環境を整えるポイント】
子どもサイズの家具を用意する
子どもが使うものは手が届くようにする(低いところに置く・踏み台を用意するなど)
ものをたくさん置かない
触らせたくないものは見えないところへ
教具棚(子どもが教具を整理して置いておく棚)を用意する
教具を用意する
モンテッソーリ教育の5つの分野
モンテッソーリ教育では、活動を5つの分野に分けています。先に6つの敏感期を挙げました。5つの分野はそれぞれ各種の敏感期に対応しています。具体的には次の5つです。
【モンテッソーリ教育の5つの分野】
日常生活の練習
感覚教育
言語教育
算数教育
文化教育
それぞれの分野に合わせたお仕事が用意されています。では、1つずつ具体的に見ていきましょう。
モンテッソーリ教育の分野➀日常生活の練習
「日常生活の練習」は、子どもが思い通りに身体を動かせるようになることが目的です。子どもが大人の真似をしたがる「模倣期」と「運動の敏感期」を利用して、実生活と深くかかわる活動を行います。個人差はありますが、模倣期は1歳半ごろ以降、運動の敏感期は6か月ごろから始まります。
日常生活の練習の具体例としては次のような活動が挙げられます。
【「日常生活の練習」の活動例】
歩く
水を注ぐ
机を拭く
室内を掃く
洗濯する
ボタンをかける
これらの活動を通して、まず子どもたちは自分の思い通りに身体を動かすこと・コントロールすることを覚えます。その結果自分でできることを増やしていき、自分の身の回りのことを自分でやるようになります。そうして自信を持ち、精神的にも自立した存在となっていきます。
モンテッソーリ教育の分野②感覚教育
「感覚教育」は、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感を感じる感覚器官を洗練させて、ものを感じ取る力を磨きます。3歳ごろから始まる「感覚の敏感期」に行います。
人間は感覚器官を通じて得た情報をもとに、ものごとを考えたり記憶したりしています。感覚を磨いて感覚器官を洗練させることは、知的な活動のためにとても大切です。モンテッソーリ博士のことばにも「感覚教育は全ての教育の基礎である」とあり、モンテッソーリ教育の中でもとくに重視されている分野です。
感覚教育に使われる教具は21種類。その中には、大きさや重さの違いを見た目や持った感覚で身に付けていく「円柱さし」、大きさ・体積・量の変化を10個の立方体で見て感じる「ピンクタワー」など、よく知られた教具も含まれています。
そのほか聴覚には音の強さを感じる「雑音筒」・音の高低を感じる「音感ベル」、匂いの違うものを入れて嗅覚を磨く「嗅覚筒」、味の違う液体を入れて基本的な味の違いを判別できるようになる「味覚瓶」などもあります。
教具は色や形・大きさなどが細かく決められています。また教具の持ち方やお仕事での使い方にも感覚を磨くために意味があります。提示する大人がそれらの意味を理解しておくことが求められます。
モンテッソーリ教育の分野③言語教育
「言語教育」では話す・書く・読む・文法のすべてを身に付けていきます。「吸収する精神」の時期には話しことば、「意識の芽生え」の時期には書きことばや文法のお仕事が用意されています。
文字に関しては書く敏感期と読む敏感期がずれているのでそれに合わせます。一般的には「読む→書く」の順で身に付ける傾向がありますが、モンテッソーリ教育では「書く→読む」の順となっています。書くことは機械的に文字を再現する単純な作業だと考えられているからです。
話しことばについては「絵カード」などで語彙を増やします。絵カードはデフォルメされたイラストではなく、実物に近いリアルな絵や写真が使われます。これは、モンテッソーリ教育では実物やそれに近いものを教材として使うという考えがあるからです。
文字については、初めに文字の部分がざらざらしている「砂文字板」をなぞったり「文字カード」などで文字に親しみます。文字を書く前には、日常生活の練習や感覚教育を通じて思い通りに手や指を動かす準備を済ませておきます。
文字を読む段階では、「絵カード」などの教具を使います。単に文字を口に出して発音するだけでなく、並んだ文字が実際のモノを表していること・意味を持つことばになっていることを理解させます。
文字についてもそうなのですが、文法も日本語に合わせた紹介の仕方で身に付けていきます。モンテッソーリ博士は母語のイタリア語をもとに理論を作りましたが、日本語はイタリア語とは文法が大きく異なるからです。
また数字も同様にして学びます。
モンテッソーリ教育の分野④算数教育
「算数教育」は、算数を体系的に学ぶことのほか、論理的な思考力・理解力・判断力を養うことが目的です。一般的な英才教育のイメージにあるような、抽象的な計算ができることだけが目的ではありません。子どもも日常生活で見かけるような数量をきっかけに理解させていきます。
初めに、実感しやすいよう数量を具体的なモノで表していきます。具体物である「数量」・その数量を表す「数詞」・それを書き表す「数字」のつながりを理解することが大切です。それは感覚教育から続くものとして準備されています。数量の理解に使う教具の例としては、「算数棒」があります。算数棒は、長さの異なる棒のセットです。一定の長さごとに、交互に赤と青に塗り分けられています。
数の感覚を理解したら、徐々に抽象的な十進法や位取りなどを身に付けていきます。この時期に使われる教具の例としては、「金ビーズ」があります。金ビーズは1個・10個・100個・1000個ずつビーズをつなげた4種類・28個のセットです。ビーズという具体物により十進法を学びます。
そして数字と色で数量を表す「切手遊び」で半抽象的な数に慣れていき、最終的には教具なしに頭の中で暗算できる最も抽象的な段階をめざします。
算数教育は、数の敏感期に合わせて3~6歳にかけて行います。
モンテッソーリ教育の分野⑤文化教育
「文化教育」は言語と算数以外の分野を総合学習として扱います。小学校の理科・社会に当たる内容を学ぶほか、美術や音楽も知識としてだけではなく身近なものとして体験していきます。子どもの知りたいという欲求に応えながら、興味・好奇心の種をまくことが目的です。
まず全体から入って詳細へ進むのも特徴の1つです。たとえば地理は、初めに宇宙からスタートし、その中の地球、その中にいくつかある大陸や陸地、その中のアジア、その中の日本という順番になっています。こうすることで全体の中の自分の位置づけに気づくことができます。
また、具体から抽象へ、という順序もほかの分野と同じく徹底されています。たとえば地球であれば、スポンジでできた地球のモデル、絵カード、説明文の順に、具体的なものから徐々に抽象度を高めていきます。
絵合わせや地球儀・地図・図鑑などを使うほか、色鉛筆で国旗を作ってみることもあります。時には動物園や水族館・プラネタリウムなどに行くこともあります。これらの活動を通して、さまざまな方向に広がっていく子どもの好奇心に応えます。
また工夫次第で、動物園で見た動物が世界のどこに住んでいるのかなど、理科と社会をつなげるような知識も身に付けることができます。
モンテッソーリ教育のメリット
モンテッソーリ教育には多くのメリットがあり、主に挙げられるのは以下の5つです。●子どもの個性を伸ばせる
●自立できる、自ら考え行動できるようになる
●積極性が身につく
●集中力が養われる
●情緒が安定する
1つずつ見ていきましょう。
子どもの個性を伸ばせる
モンテッソーリ教育では、子どもの自由を尊重し、自分で選んだ「お仕事」に取り組む機会が与えられます。大人は指示を出さず見守るのみ。自ら選択して関心を持つという過程で個々の意思が尊重されるため、個性を引き出し、伸ばしやすいとされています。また、自分に合ったペースで学び、挑戦することができるため、自己表現の幅が広がり、創造力や好奇心も育むことができます。
さらに、個々の興味や才能に応じた学習材料(教具など)の提供により、子どもはどんどん学びを深め、これまでにない発想や能力を発揮するようになるでしょう。
自立できる、自ら考え行動できるようになる
モンテッソーリ教育では、子どもは自分でやりたいお仕事を選んで自力で取り組みます。お仕事に取り組む中で、試行錯誤しながら解決策を見つけ出し、挑戦を通じて失敗と成功を経験します。また、特徴的なのは“子どもがつまずいたときや問題が起きたとき、周りの大人は基本的に介入せず、見守るだけ”という点。
大人に頼らず、自らお仕事を繰り返すことで、自然と自ら考え、判断し、行動する力が身につきます。また、その過程で子どもの自立心が養われ、自立した積極的な子どもに育っていくのです。
自分で問題を考え解決していく力は、将来社会に出たときにも大きな力となるため、小さいうちからこの力を育んでいけるのは大きなメリットとなるでしょう。
積極性が身につく
子どもが自分の興味をもとにお仕事を選ぶことで、積極性が身につきます。自分で選んだお仕事に取り組む過程で、目標に向かって進む姿勢が育ち、物事に対する積極的な取り組み方を学びます。また、自分の決めたことを成し遂げる喜びが、さらなる積極性を引き出します。
これはモンテッソーリ教育が重視する「整えられた環境」だからこそ叶うもの。自分のしたいことを、思いのまま自由にできる環境が、子どもの積極性や自主性の成長に役立つのです。
集中力が養われる
モンテッソーリ教育では、一つのお仕事や活動に没頭することができます。教師や他の子ども、周りの大人からの過度な干渉を受けることなく、自分の学びに集中できる環境が整っているため、自然と集中力を養い、長く深く物事に取り組む能力を身につけられます。夢中になれる教具や、お仕事に集中できる環境が整っているため、集中力とともに、忍耐力や自己制御のスキルが発達するでしょう。
情緒が安定する
モンテッソーリ教育では、強制されることなく自分で自分のことを決めて行います。また、お仕事に取り組んでいるときも大人が口出しをすることはありません。そのため、自分がやりたいことに満足のいくまで取り組み、達成することで自己肯定感や自信がつき、情緒も安定します。また、子どもがうまくできない場合も、モンテッソーリ教育では代わりにやってあげたり、答えを教えたりすることはありません。大人は常時サポート役に徹します。
そうすることで子どもの「自分でできた」という成功体験を積み重ねることができると同時に、心の落ち着きや安定を身に付けることができるのです。
モンテッソーリ教育のデメリット・経験者が後悔していること
モンテッソーリ教育のデメリットとしてよく挙げられる点や、実際にモンテッソーリ教育を経験された親御様がどんなことに後悔しているのかをご紹介します。ただし、大前提として、後悔している方に共通しているのは「モンテッソーリ教育そのものが悪い」というわけではないということ。
思うように環境が整えられなかったり、親御様ご自身が自分の幼少期とは異なる価値観を受け入れられなかったり、園の教育方針や内容が合っていなかったりすることが後悔につながっているようです。それでは具体的に見ていきましょう。
環境を整えるのが難しい、親御様の負担が大きい
モンテッソーリ教育の実施において最も難しい点の一つは、適切な環境を整えることです。特にご家庭において、施設で使用される多種多様なモンテッソーリ教具を自宅にも備えようとすると、金銭的な面での負担はもちろん、子どもが教具に対して持つ興味や成長段階に合わせた更新も必要となり、維持が困難になるケースも少なくありません。
そのほか、モンテッソーリ教育を行う園は少人数制が多いため、係や当番は必然的に多くなり、親御様への負担が大きくなる傾向にあります。また、園自体の数が少ないため、必然的に送迎が必要になることも。このように他の園に比べて、日常生活における負担が大きくなる可能性があることは、親御様にとってのデメリットとなるでしょう。
協調性にかけ、わがままに。集団生活になじめなくなることも
モンテッソーリ教育においては、自主性の尊重と個別学習に重点が置かれます。その結果、わがままになったり、他の子どもたちと協力することや周りに合わせることが不得意になったりする場合があるようです。また、モンテッソーリ教育ではない一般的な小学校へ入学した際、集団生活に戸惑い、なじめないことがあるとも言われています。
しかし、多くの場合この戸惑いは入学直後の一時的なものであり、溶け込めないままの子はほとんどいません。幼児期、幼少期は柔軟性と順応力に優れており、次第に集団生活に溶け込んでいくので、過度に心配する必要はありません!
また、集団生活では得られない学びがあるのがモンテッソーリ教育です。のちのちそれがプラスに働くことの方が多いと言えるでしょう。
子どもへの関わり方が難しい、親子関係の違和感
モンテッソーリ教育では子どもの自主性を尊重するため、親御様としては適切な距離感を保ちつつサポートすることが求められます。この教育手法に慣れ親しんでいない場合、子どもの行動をただ見守るだけではなく、どの程度関与すべきか判断するのが難しいと感じることがあります。
また、モンテッソーリ教育では子どもが「褒められるため」ではなく、「成長のため」に取り組むように促すのも親御様の役割です。過度に褒めることなく、認めて見守ることが必要なため、親子間でのコミュニケーションに違和感を覚えたり、もどかしい気持ちを抱えたりすることもあるようです。
幼稚園などで外遊びの時間や行事が少ない
モンテッソーリ教育を取り入れている幼稚園や保育園では、屋内の活動に重点を置くため、外遊びや行事が一般的な園と比較して少ない場合があります。そのため、外で思い切り体を動かしたいと願う子どもにとっては物足りないと感じる場合があります。活発な性格の子どもにとっては欲を満たせないことがあるかもしれません。
ただし、この点に関しては、園によって対応が異なり、屋外活動の時間を設けて子どもが十分に身体を動かせる機会を確保しているところもあります。
活動的な子どものニーズに応えるためにも、親御様が園選びをする際は、屋外での活動時間や体を使う学習がどの程度含まれているかを考慮することが重要です。
興味があることしかやらなくなる
モンテッソーリ教育では、子どもが自ら学びを選択しますが、これが興味・関心のある分野にばかり集中し、苦手な領域への挑戦が少なくなることがあります。個人の特技や関心は伸びる一方で、苦手なことを克服できないまま成長していくことも。総合的な能力向上にはバランスが必要です。
小学校入学後に周りとの違いを感じた
モンテッソーリ教育環境から一般の小学校へ進学すると、教育方法やクラスでの雰囲気の違いを感じる子どもがいます。特に、自主学習に慣れ親しんだ子どもにとっては、教師の指導に基づく授業スタイルへの適応が課題となることがあります。子どもに合っていない、楽しそうではない
これは、親御様が子どもの成長を想うばかりに、モンテッソーリ教育に夢中になってしまうと起こりがちな後悔。親御様がモンテッソーリ教育に強い思い入れを持っても、子どもが楽しんでいなければ意味がありません。そもそもモンテッソーリ教育は、子どもが「自発的」に取り組むことを重視した教育法のため、無理強いさせたところで本来得られるはずのメリットは期待できません。
モンテッソーリ教育では、親御様が強制したり、考えを押し付けたりすることなく、子どもの興味や状態を見極めながら柔軟に対応することが大切です。
子どもに向き不向きは「ない」!モンテッソーリ教育に向いているご家庭の特徴
モンテッソーリ教育は、子ども一人ひとりの個性や自主性を尊重し、その能力を最大限に引き出そうとする教育方法です。つまり、これにより子どもに向き不向きは存在しません。重要なのは子どもが何に興味を持ち、何をやりたいと思うかを観察し、サポートする大人の姿勢です。この教育法に向いているかどうかは子どもよりもその家庭、特に親御様の姿勢に依存すると言えます。
では、モンテッソーリ教育はどのようなご家庭に向いているのでしょうか。詳しくみていきましょう。
環境を整えられるご家庭
モンテッソーリ教育の成功は、子どもの意欲を引き出し、自立心を育てるための環境作りが大きく影響します。家の中で子どもが自ら学ぶためのスペースを確保し、相応しい教材や道具を整えるなど、環境作りが可能なご家庭は、モンテッソーリ教育に向いていると言えるでしょう。
親御様が教育方針や役割を負担と感じない
モンテッソーリ教育を実践する上で、親御様が教育方針に賛同し、その役割を喜んで担うことができるかどうかがカギを握ります。この教育法に対する理解と共感がなければ、親御様にとってただただ負担となってしまう可能性があるでしょう。
口出しせず子どもを見守ることができる
子どもが自らの興味に従って活動する中で、親御様が干渉せずに見守ることができるかも非常に重要です。モンテッソーリ教育では、子どもが自分で試行錯誤し、自分の力で問題を解決する過程を大切にします。そのため、子どもの選択を尊重し、間違いから学ぶ機会を与える必要があります。見守る忍耐力がある親御様には向いているでしょう。
モンテッソーリ教育で後悔しないためにできること・押さえておくべきポイント
モンテッソーリ教育を検討する際には以下の点を押さえておきましょう。モンテッソーリ教育についての情報収集・理解を深める
モンテッソーリ教育に関する情報収集を行い、理解を深めることが大切です。教育法の本質、実践に必要な道具や環境作り、期待される効果など、幅広く情報を得ることが重要となります。無理して取り入れない!子どもの意志を尊重する
モンテッソーリ教育の核心は子どもの自主性を尊重することにあり、教育法を無理に押し付けることは逆効果です。子どもが関心を示さない活動を強要するのではなく、自ら進んで取り組める環境を提供し、その選択を尊重してあげましょう。周りの環境を整える(教育環境や周りの理解)
モンテッソーリ教育を成功させるには、子どもが自ら遊べる(学べる)整えられた環境をつくることに加え、子どもの成長を支える周囲の環境が欠かせません。モンテッソーリ教育の幼稚園や学校を検討する際は、入念な下調べをする
教育施設の特色や方針を事前に理解し、ご家庭の価値観や期待に合っているかを確認することが大切です。また、施設側と密接にコミュニケーションを取り、共同で子どもの成長をサポートする姿勢が求められます。モンテッソーリ教育の場所
モンテッソーリ教育の場所としては次の3つがあります。
【モンテッソーリ教育の場所】
保育園・幼稚園
小学校
自宅
1つずつ見ていきます。
場所➀保育園・幼稚園
モンテッソーリの5つの教育法(日常生活の練習・感覚教育・算数教育・言語教育・文化教育)を実践している保育園・幼稚園があります。一般的にモンテッソーリ教育は幼児教育の1つと捉えられていますが、その印象通り比較的多くの保育園・幼稚園があります。
認定園として認める制度がないため、少し見つけにくく感じるかもしれません。しかしキリスト教の園などでもモンテッソーリ教育を取り入れているところがあります。ただしどのぐらい取り入れているかはそれぞれです。事前に見学することをおすすめします。
モンテッソーリの保育園・幼稚園の特徴としては次の点が挙げられます。
【モンテッソーリの保育園・幼稚園の特徴】
縦割りクラス
お仕事の時間がある
年間行事が控えめ
モンテッソーリの園では、年齢別ではなくいろいろな年齢の子が混在する縦割りのクラスになっています。ただし完全に年齢が無関係というわけではなく、発達段階で大きく3つに分けられています。
【モンテッソーリ園のクラス分け】
ニド(0~1歳半)
インファント(1歳半~3歳)
プライマリー(3~6歳)
またお仕事の時間があるのが大きな特徴です。お仕事の時間に先生が子どもとどう関わっているか・教具がたくさんあるかどうかは環境を見るポイントの1つです。先生がモンテッソーリ教育の資格を持っているかも目安になります。
モンテッソーリ教育をやめたという人は、教育方法そのものより園が合わなかったケースがほとんどです。必ず見学に行き、先生に会うようにしましょう。
場所②小学校
2024年2月現在、モンテッソーリ教育が受けられる小学校は国内(東京・神奈川)に3か所しかありません。次の通りです。
東京モンテッソーリスクール(東京都港区白金台)
マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクール(神奈川県横浜市青葉区)
ザ・モンテッソーリ・スクール・オブ・トウキョウ(東京都港区南麻布)
概要を確認していきます。
東京モンテッソーリスクール(東京都港区白金台)
学年のないクラス、美しい教具へのこだわりなどモンテッソーリ教育ならではの環境が整備されています。学びの時間はアカデミックな教材を使ったお仕事の時間とアーティスティックな教材のお仕事の時間とに大別されますが、やはり本人が選択します。2023年には中学部が開校し、小中一貫校となりました。
マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクール(神奈川県横浜市青葉区)
発達の第2段階にある小学生に合わせた「コスミック教育」に則った教育が行われています。1~3年・4~6年の縦割りのクラス・教具を使ったお仕事などのほか、さまざまな分野の専門家を招いた授業なども行われてるのが特徴です。中学部がないため、卒業生の多くが私立中学を受験・進学しています。
ザ・モンテッソーリ・スクール・オブ・トウキョウ(東京都港区南麻布)
モンテッソーリ教育を行っている幼稚園から小中学校まであるインターナショナルスクールです。2003年創立と、3校の中で最も長い歴史を持っています。外国人の子どもも多く在籍しており、多様な生徒が集まる環境の中で国際感覚を自然に身に付けることができます。
なお、いずれも認可外の学校となっています。そのため日本の義務教育と異なる特別な教育扱いとなり、中学進学などの問題も起こりえます。入学はメリット・デメリットをよく考慮したうえで判断する必要があります。
場所③自宅(おうちモンテ)
保育園・幼稚園のほかでは自宅でモンテッソーリ教育を行うのが一般的ではないでしょうか。子どもが集中できる環境を整え、教具を用意し、大人が適切に関わることができるなら、家庭でもじゅうぶん可能です。
環境は、先に述べたように子どもが自力で活動できるようにします。とくに子どもが自力で教具を手に取れるような収納がされているかが大切です。「モンテ棚」とよく言われていますが、教具を子どもが自由に見て選べるように収納する棚を用意します。
教具は市販のものを購入するほか、自作するという方法もあります。最近は自作方法をまとめた本やサイトもあるので、そういった情報が参考になります。
そして一番大切とも言えるのが大人の関わり方です。初めに手本を見せたらあとは見守る。必要な時だけヒントを与えるなど手助けをする。それをやり続けることができるかどうかが重要です。
モンテッソーリ教育の本
モンテッソーリ教育について、より詳しく知りたい方におすすめの本を3冊ご紹介します。
『0~3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!』
藤崎達宏著
三笠書房
2018年発売
「吸収する精神」の時期に当たる0~3歳の子どもに対して、具体的にどのように接したらよいかがコンパクトにまとめられています。実践的な内容となっているので、手っ取り早くモンテッソーリ教育を始めるのにも最適です。また子育ての合間に読むのにちょうどよい量や濃さになっています。
『おうちモンテッソーリはじめます』
シモーン・デイヴィス著
永岡書店
2020年発売
理論的な面と実践的な面がバランスよくまとめられています。タイトル通り、自宅でモンテッソーリ教育を行う際には必携の書。大人はどうしたらいいのか?が具体的・実践的に書かれています。理論を理解したうえで実践したい方なら満足できる内容です。
『子どもから始まる新しい教育 (国際モンテッソーリ協会(AMI)公認シリーズ)』
マリア・モンテッソーリ著
風鳴舎
2017年発売
モンテッソーリ博士本人が書いた小冊子5冊を1冊にまとめたもの。ボリュームはそれほどではありませんが、実践面よりもやや抽象的な理論に関する内容が中心となっています。そのため、ある程度モンテッソーリについての知識があり、理論を深く理解したい方に向いています。
モンテッソーリ教育のおもちゃ
わずかではありますが、モンテッソーリ教育のおもちゃをいくつか紹介します。
【円柱さし】
大きさの違う分銅のような木製の円柱シリンダーのセットと、それがぴったりはまる木枠の組み合わせです。指でつまんで木枠にはめるという手先の運動になります。また大きさや太さが揃わないとはまらないため、大きさや太さが自然に学べるようになっています。モンテッソーリの教具・おもちゃの定番で、子どもにも人気があります。
【ひもとおし】
形や色・大きさなどが違うビーズを紐に通すものです。指先の使い方を学びながら、集中力を身に付けることができます。小さいうちは太めの紐と大き目の穴のあいたビーズがおすすめです。成長してきたらお手本と同じビーズを同じ順番に通すといった遊び方も楽しめます。
【ボールおとし】
赤ちゃんがものを落として遊ぶようになったころに、箱にあいた穴にボールを落として遊びます。側面の1か所が空洞になっていて底がトレイになっているタイプや、箱が引き出しになっているタイプなどがあります。手の運動のほか、ボールが見えなくなってもなくならずに存在するという気づきにも役立ちます。
モンテッソーリ教育を受けた有名人
数々の最年少記録を塗り替えた藤井聡太・将棋棋士が幼少期にモンテッソーリ教育を受けていたことはよく知られています。そのほかにも、多くの有名人がモンテッソーリ教育を受けています。具体的に挙げていきます。
アンネ・フランク(「アンネの日記」著者)
キャサリン・グレアム(ワシントン・ポスト経営者、ジャーナリスト)
ジェフ・ベゾス(Amazon.com創業者)
サーゲイ・ブリン(Google創業者)
ラリー・ペイジ(Google創業者)
テイラー・スウィフト(歌手、グラミー賞受賞者)
ガブリエル・ガルシア・マルケス(作家、ノーベル文学賞受賞者)
アンソニー・ドーア(作家、ピューリッツァー賞受賞者)
ヘレン・ハント(女優)
藤井聡太(将棋棋士)
モンテッソーリ教育は創造性を高めるため、芸術や起業などで有名になった人物が多数存在します。
その代わりにモンテッソーリ教育は運動の機会が少ないとされますが、運動選手の中にもモンテッソーリ教育を受けていた人がいます。次にスポーツ界の人物の例を挙げます。
ステフィン・カリー(NBA選手)
平野美宇(卓球選手)
大野将平(柔道選手)
石川佳純(卓球選手)
このように、さまざまな分野で活躍する人物を輩出しています。なお、マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、ピーター・ドラッカーなども名前が挙がることがありますが、彼らについては不確実なようです。
モンテッソーリ教育は子育てのよい方法の1つ
モンテッソーリの教具のような知育玩具で遊ぶことは、子どもの好奇心を刺激し思考力や手先の器用さなど子どもの成長を促すことができます。
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この記事の監修者
And TOYBOX おもちゃコラム 編集部 岩瀬裕紀
おもちゃレンタルサービスAnd TOYBOXを運営する株式会社みのり代表取締役。2017年に当サービスを立ち上げる。そのほかに雑貨やインテリアのオンラインショップAnd MONOと保険調剤薬局を運営する。
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